実例その2: 「レセコンがないとやっていけない」と嘆いていた先生がレセコンを捨てた日
さて、前回は開業したてで保険治療でもヒマだったために廃業か自費移行かのどちらかを選ばなければならなかった先生の例をお話しいたしました。
今回は保険治療とセットになっている「レセコン」の扱いについて、実際にあった相談例をもとにお話ししたいと思います。
今回の例は近県の50代の男性の先生からのご相談でした。
ご相談の内容は、
・惰性で保険治療を続けているが、本当は保険が適応されない症状なので心苦しく感じるようになってきた。
・できることなら保険治療をやめて自費治療メインでやっていきたい。
・自費治療メインでやっていきたいが何から始めたらいいか分からない。
・でも自費治療一本では怖いので保険治療は残したい。
・つまりレセコンは念のため残しておきたい。
というような内容でした。
現在、保険治療をメインで続けておられる先生の中で、レセコンなしでやっている方はほとんどいないのではないでしょうか。
・レセコンがないと計算方法分からない。
・手計算でやったこないし・・・。
・間違ったら返戻とか面倒なことになりそうで・・・。
・そもそもレセコンをなくすなんて考えたことがない。
こうお考えの方も多いと思います。
私自身も保険治療をやめた頃はレセコンが無いと不安でしたし、当時はまだ交通事故の患者さんもいましたのでレセコンをなくすことは考えていませんでした。
しかし、ある事情で急にレセコンを使うことができなくなりしばらくは自賠責保険の計算を手計算で行なっていました。
電卓やエクセルがありますから内容を理解していればレセコンは特に必要ありません。
健康保険などの保険治療も同じで、レセコンがなくてもレセプトは作成可能です。
やろうと思えば、調べたり今までのデータを使って作成することもできるはずです。
やろうと思えば、ですが・・・。
しかし今回の相談者の先生は、
「私は長年レセプト業務はレセコンで行なってきたので、今更レセコンなしでは計算ができない。」
「調べたり、他人に聞いたりすればできるというのは理解できるが自信がない。」
「だからレセコンを手放すことは考えにくい。」
というようなことを言われていました。
レセコンを手放したくないということは、保険治療から自費移行したいと言いながら、保険治療からの脱却という大きな変化に尻込みしてしまっている状態かなと感じました。
まあ、新しいことを始めるというのはとても勇気がいることですので、怖い、不安、焦燥感などの感情が出てしまうのはよく分かります。
そもそも「調べる気が無い」「やりたくない」という感情を隠すために「できない」と言ってしまうお気持ちも少しわかります。
・レセコンが無くなってから急性のケガの患者さんがもし来たらどうしよう。
・自賠責保険の計算を間違ったらどうしよう。
・整骨院なのに保険が使えないって患者さんに言いにくい。
今回ご相談いただいた先生もこのように言っておられました。
「それではこれからも保険治療をメインでやっていかれたらどうですか?」
とご提案申し上げて、一旦はそれ以降のご相談は保留となりました。
数日間お考えになられてからご連絡がありました。
「やはり今のままではジリ貧です。整骨院をマッサージ屋さんと一緒だと考えている保険患者にも関わりあいたくありませんのでお願いします。」
とのことでした。
そうですよね、現状に耐えられなくなって自費移行への道を考え出した「まともなお考えの先生」が元に戻ろうとするのには、さらに大きなエネルギーが必要です。
一度でも現状よりは希望が持てる自費移行の道に進もうと思ったら、もう戻れるはずがありません。
「急に移行するのは不安や怖さがあるから段階的に移行していきましょう」
と提案して進めていくことになりました。
仮に急性のケガの患者さんが来られて、そのときにレセコンがなければ手計算をするか、または自費治療をするかしかありません。
もしくは窓口での一部負担料金だけ支払ってもらい、ボランティアで治療するかです。
どれが正解というわけではありませんが、やり方は幾つでもあるということです。
大事なのはレセコンがないと治療ができないというこはない、ということです。
レセコンは治療機器ではありませんからね。
少なくとも一番治療効果が高い「手」をお持ちなのですから必要以上に心配することはありません。
ただ私自身もそうでしたから自費治療に移行していく際の不安や怖さは十分理解しているつもりです。
だからこそご本人の意思を最初にしっかりと確認をして、
・本当にグレーな部分や不正から足を洗いたいのかどうか。
・本当に患者さんのために自分の治療技術を提供したいのかどうか。
ということをご自身で考えていただく時間を取るようにしています。
結論から申しますと、この先生はあれだけ固執していたレセコンを最終的には処分されました。
「自賠責の計算だけがちょっと不安ですが、急性のケガも自費で治療すれば問題ありませんから。」
ということでした。
最初とは随分と考え方が変わって頭の中がスッキリしたようです。
「第23回 これを見れば誰でもできるスムーズな完全自費移行までの7つのステップ(その7)」でもお話ししましたが、結局保険治療をやめるということが自費治療に移行していくには必要不可欠なんです。
それはなぜでしょうか。
皆さんも記憶に新しい、あの有名歌手の薬物所持による逮捕のニュース。
違法薬物が手元にあるから再犯してしまうんですね。
違法請求ももちろん立派な犯罪です。
レセコンが皆さんの手元にある限りポチッと気軽にやってしまうことでしょう。
・売り上げが欲しい
・これくらいなら大丈夫だろう
・今月は患者さんが少ないし・・・。
・交通事故の患者さんの通院日数を少しだけ増やしてしまおう
レセコンはこのように心が弱った時に手を出してしまう麻薬のようなものです。
皆さんは保険治療に依存してしまっていることを認識してください。
レセコンがない方が正しい活動ができるのです。
まずはレセコンがない前提で考えてみましょう。
保険治療依存の連鎖を今こそ断ち切りましょう!
また自費治療に移行するためには、レセコンに限らず院内の保険治療に関する掲示物を全てなくすということも1つのポイントではあります。
・健保協会からのお知らせ
・保険証が新しく変わります
・保険適用は骨折、脱臼、捻挫、打撲、挫傷だけです
・アンケートが自宅に届いたら持ってきてください
・これって保険が使えるの?と思ったらご相談ください。
・交通事故は0円です
・交通事故のことなら何でもご相談ください
・窓口負担金が変わります
などなど、保険に関わるもの全てを撤去しましょう。
そもそもアンケートが患者さんの自宅に届いたら、書いて提出するのは患者さんです。
内容や書き方が全く分からないようなアンケートを送付するはずがありませんので、整骨院で書き方のアドバイスをするというのはナンセンスですよね。
書かれてマズいことがある自体が問題です。
さらに、「交通事故のご相談」も「何でも聞いてください」と言っていい先生は日本に数えるだけだと思います。
お金のためだけに事故の患者さんに来てもらいたい、という発想だけでこんなことを言ってしまうとえらい目に遭います。
当院でも過去に「高松地方裁判所」から事故患者さんの通院記録の提出を求められたことがあります。
もともとカルテも診療記録もしっかりと残していましたので、数分でコピーして郵送したら、対応が早いとお礼のお電話をいただきました。
なぜ記録のコピーがいるのかを聞いたら、事故の件で裁判になっているということだけを教えてくれました。
その患者さんは軽症だったので「もう治療にこなくていいですよ」と伝えたら「よそに行って治療を続ける」と言っていましたから、治療とは別の目的で通院を続けたのではないかと思います。
交通事故を扱うということはそのような種類の人間とも関わるということですので、安易に「何でも聞いてください」というべきではないと考えます。
話が逸れましたが、極端な話、保険治療をするかどうかに関係なく上記のような掲示物は誰も見ていませんので元々不要なものです。
何度もお伝えしますが、自費に移行するのは段階的で構いません。
いきなりで怖かったら掲示物も一枚ずつ撤去するのでもいいんじゃないでしょうか。
「あれ?ここに貼ってあったポスターは?」なんてきっと誰も気付きませんよ。
1枚ずつでも1つずつでも、一歩一歩歩みを進めることのほうが大事ですよ。
次回は「実例3:自分なりに自費移行した結果・・・。」です。
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