第6回 追い詰められた柔道整復師が保険治療に偏ることに未来はありません。

前回までの2回にわたり、柔道整復師と業界の現状をお伝えしてきました。

まだお読みでない方はぜひご一読くださいね。

『第4回 追い詰められた柔道整復師。業務停止は10年間で171人に。』

『第5回 数十円でもダメなものはダメ。10年以下の懲役刑も。』

 

さて、ここで保険治療に関して、一度整理しましょう。

厚生労働省によると「療養費の支給対象となる負傷は、負傷の原因が明らかで、身体の組織の損傷の状態が慢性に至っていない急性又は亜急性の外傷性の骨折、 脱臼、打撲及び捻挫であり、内科的原因による疾患は含まれないこと。」
とされています。

そして「急性、亜急性のケガを起こした体の部位のみ」に対しての治療です。

ですから慢性の症状、例えば慢性腰痛やヘルニア、頭痛などに対して健康保険は適用になりません。

当たり前ですが

「右手の母指の捻挫」なのに「左の肩関節の捻挫」として健康保険を使って治療することはできません。

もちろん健康保険を扱うのは柔道整復師が治療にあたるということが大前提です。

無資格者が施術したのに健康保険は適用になりませんよね?

これは皆さんも異論がないと思います。

無資格の整体屋さんが「健康保険使えますよ」ということはありません。

 

ここで「急性のケガ」とは、

原因と結果の間に直接的なはっきりとした関係が存在するもので、関節の可動域を超えた捻れなどの外力によって体の組織(骨、筋肉、軟部組織など)が損傷を受けた状態であります。

それでは「亜急性のケガ」とはどのようなものでしょうか?

「亜急性のケガ」とは、

  • 『亜急性外傷とは何かしらの微細な外力が体に蓄積してある日突然痛みを発症する怪我のことを言います。(柔道整復学-理論偏(改訂第 4 版)P.18 からの抜粋)』

専門学校でもそう習いました。

厚生労働省によると

「「亜急性」とは、身体の組織の損傷の状態が急性のものに準ずることを示すものであり、 「外傷性」とは、関節等の可動域を超えた捻れや外力によって身体の組織が損傷を受けた状態を示すもの」 

とされています。

何かしらの微細な外力とは、

普段の日常生活の中で私たちが自然に行なっている動作、

例えば何度も繰り返して同じように腕を上にあげて洗濯物を干す、

毎日階段を上り下りすることでヒザを曲げたり伸ばしたりを数えきれないくらいに繰り返すなどの動作、

このような動作で受ける外力ということになります。

微細な外力を一度や二度受けたところでケガを起こすことはありませんが、繰り返すことで関節、筋肉、靭帯などに負担が積み重なって損傷が起こりケガが発生するという考えだと思います。

これはちょっと無理があるように感じてしまうのですが、皆さんはいかがでしょうか。

 

身体の組織の損傷の状態が急性のものに準ずる」

これ自体、定義があいまいすぎて混乱の原因になっているような気がします。

 

しかし日本外科学会や日本整形外科学会などは2014年に日本医師会の要請に応える形で「外傷は全て急性で、『亜急性の外傷』という表現は医学的にない」との見解を示しています。

この「亜急性の外傷を柔道整復療養費の支給対象として認めること」が不正を生み出す原因になっているとも言われています。

つまり「亜急性」の定義が曖昧なので、慢性痛を亜急性のケガとして療養費を請求したり、患者さんに「何度もこういう動作をしませんでしたか?」と無理やり誘導して書類上「亜急性」のケガにしてしまうということが堂々と行われていることが問題だ、と医師の方々には広く認識されているということなのです。

柔道整復療養費の支給対象に今でも亜急性の定義が用いられているのは、単に急性のケガだけでは患者数が少なすぎるという事実があるからではないでしょうか。

 

次に急性のケガについてです。

急性のケガにも色々ありますよね。

足関節の捻挫、頚椎捻挫、○○部捻挫、大腿二頭筋挫傷などなど。

もちろん骨折や脱臼もそうです。

整骨院、接骨院によって違いはあるものの、実際は骨折や脱臼の患者さんが整骨院に受診する数はそれほど多くないでしょうから、

捻挫、挫傷、肉離れ、打撲

がほとんどだと思います。

 

例えばギックリ腰についてはどうでしょう。

・朝起きたら急に腰がギクッとなってだんだん動けないほどの痛みが出てきた。

・重たいものを持ち上げたり運んだりしていないのに、前かがみになった時にビクッとなってから動けない。

・赤ちゃんのよだれかけをつけようと腕を伸ばしたらギクッとなった。

・クシャミをしただけで腰に動けないほどの痛みが走った。

実際にこのような発生機序で私の院に来られるギックリ腰の患者さんが多いです。

では先生方はギックリ腰の患者さんが来られたらどのような治療をされますか?

例えば私の院では、傷めた腰は触らずに足のバランスや痛みのない部分、例えば腕や背中を調整して腰の負担を減らして動きやすくするための治療を行います。

場合によっては

「他の院で腰をガシガシ揉まれて余計に痛くなったので来ました」

という患者さんも皆さんの院でもおられるかと思います。

 

ここで確認ですが、冒頭に述べたように整骨院で健康保険で扱えるのは

急性、亜急性のケガを起こした体の部位のみ」に対しての治療です。

 

ということはケガを起こした体の部位は「腰」ということになります。

しかしギックリ腰の元々の原因は腰にないことが多いですから、急に痛くなったと言っても患部のみの治療しかできない保険治療では患者さんの体は早く良くなりません。

逆に患部をガシガシ揉まれて悪化するということにもなりかねません。

 

変に保険治療にこだわって症状を長引かせるよりも、原因を早く取り除くことができる自費治療で痛みや不快感を早く無くしてあげた方がお互いにいいはずですよね。

私も以前は、

「保険治療ならこれだけの治療です。」

「自費治療ならこんなこともできますので早く良くなります。」

こんな風に説明していた時期もあり、逆に患者さんを混乱させてしまっていました。

患者さんからしたら、

「ええから早よ何とかしてよ。早く治したいんや。」と思うでしょうから・・・。

治療経験の豊富な先生方でしたら、もっと上手く説明も治療もできているかと思います。

いずれにしても患者さんに早く良くなってほしいということに関しては、皆さんも意見が一致するところではないでしょうか。

一般社団法人日本臨床整形外科学会(JCOA)の平成26年度シンポジウムにおいて、柔道整復師の受領委任の取扱いを廃止すべきであるとの統一見解が出されたということをご存知の先生も多いでしょう。

亜急性の定義にしてもそうですが、取り扱いを廃止にすべきだとか定義が曖昧だとかという議論が起こること自体に、柔道整復師が受領委任を取り扱うこと、健康保険に関わること自体にもう無理があるとは考えられませんか?

 

あいまいな定義があるからこそ、

「じゃあ、安くもんでもらおうか」

という患者さんも出てきてしまうということが言えると思います。

 

極端な話、保険治療の仕組みやルールを知った上で「安くもんでもらいたい」という悪質な患者さんは、今後は通える整骨院が無くて困るくらいでちょうどいいとも思います。

なぜなら気持ちよくもんでもらいたいなら、リラクゼーション系のお店なんか無数にあるわけですから。

 

あいまいな亜急性という定義に捉われるから、きっと余計に混乱してしまうのだと思います。

私も保険を扱っていたときは

「これは急性やけど、こっちは・・・慢性かな?いや、亜急性かな。」

などと判断に迷うことがよくありました。

 

ですからやはり、

・急性のケガは保険治療

・それ以外は全て自費治療

こうしたほうがスッキリして分かりやすいと思いませんか?

 

話がそれましたが、レセプトには一部位目から負傷原因を記入する、しないという議論も過去にあったようです。

これも決まりだから記入するというよりも負傷原因がないと負傷しようがないのですから、記入するのが当たり前だと思います。

・部位転がしの取り締まり

・架空請求の取り締まり

・柔道整復師の受領委任の取り扱いの廃止検討

・柔道整復療養費の被保険者等への照会

このように多方面から柔道整復師が追い詰められています。

(不正請求や不当請求については犯罪ですから追い詰められるのは当然ですが)

柔道整復師が今までのように健康保険を取り扱って治療をしていくことに明るい未来はありません。

逆に今後は、曖昧で未来のない保険治療はきっぱりとやめて、自費治療だけを取り扱っていくことが先生方にとっても患者さんにとってもお互いに明るい未来につながるのではないでしょうか。

ここまでは現状や問題点をお伝えしてまいりましたので、どうしても少し暗い話が続きましたが、これからは先生方の輝かしい未来へと導く自費治療について書き進めてまいります。

 

その前に次回から少しだけ私自身のことをお話しさせていただければと思います。

 

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